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さよならのあとで
夏葉社さんはひとりでやっておられる吉祥寺の出版社です。
その夏葉社さんの新刊『さよならのあとで』にイラストを添えました。



ヘンリー・スコット・ホランドという
イギリスの神学者が詠んだ詩、一編を
一冊の本にしたものです。

大切なひと
(イヌでもネコでもトリでもハムスターでも)と
死別したとき、
この詩が
悲しむひとの心を少しでも支えられたら。
夏葉社さんのそんな願いが込められた本です。



一編の詩を一冊の本に。
なかなかない企画、ずいぶんと思い切った本だと思いますが、
美しい装丁
ページをめくるリズム、呼吸
イラストを挟み込むタイミング
あとがきのことば
ひとつひとつに
夏葉社さんの強い意思が表れています。



一編の詩を読むとき、
目を文字に走らせるのはつかの間のことです。
が、そのひとことひとことに
詩を書いたひと と
読むひと の人生が
ぎゅっと凝縮され反映され、
長い長いときが
詩の中に宿るのだ。
そう、しみじみと感じる本になっていると思います。




   * * *


お話をいただいたのは、三年くらい前のことです。
私にとっては、とても難しいお仕事だと感じました。
連ねられているのが非常に普遍的な言葉なので、
そこに絵を添えるということは、素の、なにもない、
なにものでもない私自身を問われているような気が
してしまったのだと思います。

何か別の仕事と平行してすすめることができなくて、
また、別の仕事が忙しくて一度手が離れてしまうと、
もういちど『さよならのあとで』へ戻るまでの気持ちが重くて、
たびたび投げ出したくなりました。

『さよならのあとで』に関わっている三年間に、
家族が倒れたり、いろいろなことがありました。
そういうときにこの本について考えるのは
とても嫌だったりもしました。

それから、この本の愚痴ばかり言ってた時期もありました…。



昨年の震災後、気持ちがふわふわと落ち着かなかったとき、
『さよならのあとで』のイラストを描くことから
まず始めました。
絵を描くと、そして紙にむかって手を動かすと、
気持ちがしゃんとする
というか、
地に足がついた感がすこし戻ってきました。



   * * *



出来上がった本についてあまりマイナスなことを
書くべきではないと思うのですが、
でもとても正直なところ
この本のわたしのイラストはあまりよくないというか、
へたくそだし、ツメの甘さが目立つし、
リズムが乱れてしまっていたり、
「これしかできなかった」
という思いでいっぱいです。

でも一方で、
これが、今わたしにできる精一杯でもあります。

夏葉社さんやデザイナーさんの力で助けていただき、
導いていただいて
出来る限りのことはやってみた上での
これが
今の精一杯なのだ と思いました。

今まだ、
直視することができないほど、いっぱいいっぱいで
冷静にこの本を手にとることができません。




そういう仕事と巡りあえたことは、
とても、とても幸せなことだと思います。







| kumaneko2009 | 22:38 | comments(28) | trackbacks(0) | pookmark |
そら展終わりました。
そら展、無事終りました。
お忙しい中足をお運びいただいたみなさま
本当にどうもありがとうございました。
今回の展示にあたって、
お世話になった方々、
ご迷惑をおかけしてしまった方々、
行けなかったけどと気にかけてくださった方々、
本当に本当にありがとうございました。






陶芸作家の石神照美さんと一緒に
二人展を開くのは、そら展で三回目になります。

石神さんとは、もう15年ほどのおつきあいになります。
まだ若かりし20代の頃、友達に

お姉さん の同僚 の妹さん が

表参道の同潤会アパートでグループ展を開いているから見に行こうと
連れられて行き、そこでお会いした、その「妹さん」というのが、
石神さんでした。
つまり、ほぼ無関係なひとの展覧会にたまたま行って、
偶然お会いしたということなのですけれども。


その当時から、石神さんは、中に電球をしこんだ
陶の家の作品を作っていました。
同潤会アパートの古びたギャラリーの中に、頼りない、けれども、あたたかい
あかりが灯ったたてものがいくつも並んでいて、
可愛くて、気負いがなくて、淋しげなその作品のたたずまいに
惹かれました。
私が一目惚れして、それ以来のおつきあいです。



だけど、どうしてこう何度も、石神さんと二人展をしているんだろうなあ…と
我ながら不思議な気持ちで考えます。


でも、石神さんがいなかったら、そして二人展に誘ってもらわなかったら、
仕事以外のところで、私はこんなにも素直に、しかしねちねちと、
制作にしがみついてくるようなことはなかったかもしれない。

私は、そしてたぶん石神さんも、筋道だってものごとを考えることが
得意なほうではなく、話し合いも要領を得ません。なので
二人展は、その場その場でいきあたりばったりであったり、
やりっぱなしであったり、ずいぶんまとまりのない道のりを歩いています。
ですが石神さんとは、目指すものが重なるところがあり、
まったく違うところもあるけれども、共感しあえるところがたくさんあり、
影響されたり、考えさせられたり、ひっぱってもらったり、そんな感じ…
のように思います。

それに、石神さんという人はほとんどぶれることがないので、
石神さんに映すと、そのときそのときの自分のありようが
すこし見えてくるような気もします。




以前から憧れの眼差しで拝見していた森岡書店さんで今回展示をすることが叶ったのは、
石神さんのおかげです。
森岡書店さんの、端正でそっけない、でもあたたかみのある不思議な空間に
石神さんががっしりと自分の世界を構築し、そこにわたしの絵を置いていただきました。



今、一週間に満たなかったあの展示のことを思い出すと、
森岡書店さんの小さな白い部屋にむかって、自分が
夜道をとぼとぼと歩いているような気持ちになります。

部屋の中にはあたたかなあかりが灯り、大きく美しい古書の間をぬって
ちいさな家が散在し、そこではそれぞれの家に住むちいさなひとたちの
日々の生活が淡々と営まれ、
その小さな頭上には、わたしが描いた空がぼんやりと小さく漂っていて、

それを心に思いながら歩く道は、
暗くて寒いけど、
心の中はすこし明るく…というよりも…なんだろう?
・・・楽しく? そんな気分になります。

でも、あの空間は、今はもう、どこにもないのだと思うと、
郷愁めいた気持ちが心の中に広がります。







今回の展示で、石神さんの集落は販売されていて、
初日にたくさん並んでいた家が、いっこいっこ売られて場所を移していき、
それに従って展示の景色も、一日一日、すこしずつ変わっていきました。

わたし自身は、購入はしませんでした。
家に連れてかえって一軒二軒と並べてみてしまったら、
森岡書店さんの白い壁と電球の明かりに照らされて見た
あの空間の記憶が、また違うものに変わってしまいそうな
気がして。

展示ってはかないものだなあ。




| kumaneko2009 | 22:59 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
そら展のこと その2
2012年になりました。
今年もどうぞよろしくお願い致します。




6日から、石神照美さんとの二人展『そら展』はじまります。
もしも、期間中に近くにお越しのことなど
ございましたら、
どうぞどうぞ、ぜひとも!お立ち寄りくださいませ。

森岡書店さんは、主に写真集を中心に扱っている
素敵な古本屋さんですが、とても気持ちのいい空間です。


私は、
6.7日と不在にしておりますが
(DMに書いてお出しできなくて
申し訳ありませんでした)
8日以降はずっといる予定でおります。

ぜひぜひ遊びにいらしてください。




| kumaneko2009 | 13:54 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |

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